M-1160福山・吉富式核分割コブラシャフトスパーテル

 

M-1160福山・吉富式核分割コブラシャフトスパーテルはこうして誕生した

M-1160福山・吉富式核分割コブラシャフトスパーテルは超音波白内障核乳化吸引(phaco)後の水疱性角膜症の発生を最少限に抑えるため、phaco術中に核が角膜内皮に押し当てられないように核片を上から押さえると同時に核分割フックの機能を併せ持つ器具を開発したいとの発想から開発されたものです。

アイデアは"おでん"から!

核分割等を目的とした既存のフック・スパーテル類は一本のシャフトであるため、浮き上がろうとする核片を押さえるのは非常に困難です。太宰府市の吉冨 文昭先生はとある料理店でおでんを煮込んでいる料理人が浮き上がってくる材料を二本の箸を使って巧みに押さえているのを見て、フックやスパーテルのシャフトが二本になっていれば核の操作が容易であるのではないか、と考えられたのが出発点でした。

開発スタート!そしてトライ&エラー!

M-136分割君(徳田式核分割フック)のシャフトをS字状にすることを先生が提案されたのが平成14年7月でした。製造上シャフトをS字状に作るのは形状の安定化が難しく、当社の提案で、稲妻型のシャフトを設計し、図面化の後、試作品を製造しましたが、サイドポートから挿入する際に引っかかって操作性が悪く、また核片を押さえる効果も期待したほどの成果が得られず、失敗に終わりました。
次に、分割フックに連結するシャフトに楕円型の“へら”を取り付け、核片を押さえるように試みました。しかし、板状の“へら”では核片を安定して押さえることが出来ません。板状では水・空気などの逃げ道を塞いでしまうので安定した押さえが困難だったのです。

形状は"コブラ"のように

楕円形の“へら”のかわりに輪匙状にすることにより押さえの安定化が改善されることが実験的に判明し、リング状に変更して試作を行いました。しかし試作品は1.5mmの切開創から眼内へ挿入するには大きすぎたため、適正なサイズを見極めるために幾度となく試作・改良が繰り返されました。
この形状により切開創からの挿入と核片の押さえの効果は改善されました。しかしカプセル内の中心より6時に近い方向では操作性に問題がないが、中心より12時方向に近づくにつれ、楕円型の部分がサイドポートからはみ出したり、引っかかったりして操作の邪魔になることが判明したのです。
試作品を試用された大牟田市の福山 誠先生のアイデアを参考に、コブラ状輪匙の大きさ・位置に微調整を施し全体的にマイクロ化を行いました。これによりサイドポートからの挿入、カプセル内での操作性の改善が実現される形状になったのが平成15年6月、約1年の後に遂に完成品が誕生したのです。

そしてさらなる発展へ

平成15年6月25日、吉富 文昭、福山 誠、両先生から実用新案登録共同出願がおこなわれ、合わせて㈱イナミから器具の意匠登録が出願されました。
平成15年10月にはM-136N永原式フェコチョッパーにコブラシャフトを組み合わせる要望が山口県周南市の船津先生からあり、製品は永原、吉富、大鹿、大木の各諸先生に御使用頂き、その有効性が報告されています。
当該器具は専門誌「眼科手術」17:369-370,2004に掲載されたほか、平成17年1月大阪で開催された第28回日本眼科手術学会総会においてその有効性が報告されて好評を得ております。