「後藤式剪刀付き持針器」の記事が掲載されました!

2017/09/25

東京医科大学眼科 主任教授 後藤浩 先生ご考案の「後藤式剪刀付き持針器」が日本眼形成・再建外科学会のニュースレターに掲載されました。後藤先生が、「研修医より役に立つ」というキャッチで解説されておりますので是非ご一読下さい!!

タイトル:私の好きな器械 ~研修医より役に立つ~

東京医科大学病院 眼科 主任教授 後藤浩 先生

「前回の2爪釣針鈎に引き続き、平成16年に導入された卒後臨床研修制度の余波が生み出した手術用器具を紹介させていただきます。
この器具の基本的なコンセプトはNHKの幼児番組「ひとりでできるもん!」です。
したがって、助手として優秀な医師やトレ一二ンされた看護師さんが手術のお手伝いをしてくれる施設では無用の長物です。
最近でこそ、少しずつ眼科を希望する若者の数が戻りつつあるようですが、ごく一部の勝ち組の医局を除き、まだまだ後期研修医の確保に四苦八苦しているのが多くの大学医局の現状と思われます。
人手不足、看護師不足ゆえ、私自身、眼瞼の手術の多くは一人で眼窩疾患の手術も助手は最高によくて後期研修医1年目、普通は眼科を選択しながらもいずれは皮膚科や消化器内科医になりそうな初期研修医、時には学生最後の年に実習先として眼科を選んでくれた医学部6年生の学生です。
そんな彼らと手術を行いながら、当然、最後は創の縫合を残すだけという局面を迎えます。
軽快に鑷子と持針器を駆使して創を縫い、次いで、助手に糸を切っていただくわけですが、マイク口サージャリーの場合、これがなかなかスムースにはいきません。
じっと糸を持ち上げながら糸を切ってくれるのを待つ自分。その糸の周りを旋回、あるいは乱高下する剪刀・・・慣れない彼らにとっては焦りと緊張に満ちた辛い時でしょうが、じっと糸を牽引しながら待っている自分にとっても修練に近い時間帯です。
間違っても「早く切ってよ。」などと彼らを傷つけるようなことは言わないし、言えません。初期研修医の場合、一纏の望みとは知りながら、もしかしたら眼科に入局してくれるかもしれないわけですから。
ただ、我慢にも限界があります。隣の部屋にはすでに次の手術予定の患者さんが待機している場合もあります。
そのような時に威力を発揮するのが、この「切糸機能付き持針器」です。形成外科などでは、オルセンヘガール持針器として日常的に使用されている器具ですが、それらは概して大ぶりでぺアン鉗子のような形状の持針器でのため、マイク口サージャリーには適しておりませんし、眼科医には扱いにくいものです。

今回ご紹介する器具も、剪刀に相当する部分の長さや、先端の針を把持する部分の形状や大きさなどについては、(株)イナミの担当の方と何度も議論と改良を重ねながら最終的に現在のスタイルに落ち着いていきました。欲を言えば容易に10-0ナイ口ン糸が把持できるように、先端部分はもっと繊細な形にしたいところでしたが、いろいろな制約もあってこれが限界とのことでした。
いずれにしても創の縫合に際して、いちいち持針器を剪刀に持ち替えることなく、ひとつの器具で縫合と糸切りをひとりで行う事ができるこの手術道具は、人手不足、人材不足の現代には威力を発揮する私のお気に入りの手術道具のひとつです。
糸を切る、縫うをこの一本でこなすハイブリット製品。
先端部が把持する部分と糸を切る部分に分かれているため、縫合時に器具を持ち替えの必要がなく、この一本で行うことが可能です。先端は汎用性のある5-0-7-0に適したサイズとなっており、結膜や眼険皮膚の縫合、外眼部手術に最適です。」